ぱてんとり の 巣

知財と積読消化

書評/ 物理の散歩道 ロゲルギスト著 2009年  ー日常感覚からの類比思考は、ビジネス分析にも有効?ー

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物理学の教授陣のディナー会の成果物。

雑誌の連載記事をまとめたもので、

1960年頃に書かれた内容ということで結構古いが、今読んでも面白い。

 

例えば、満員電車での乗客の挙動を、

さながら粒子モデルのように描くと、

層流、乱流といった流体力学の概念を導入でき、

ひとの流れの「好位置」に陣取ると混雑をさけられる、

といった経験則が説明できたりする。

 

乗客を電車というハコの中に、効率的に詰めるにはどうすればよいか?

という問題設定は、

粉体を突き固めてクスリの錠剤を作るときに考慮するべき問題とも重なる。

(杵で突き固める時に、力が分散してしまうので一様に密集した錠剤を作るのが至難)

 

また、乗車時にはムラがあった人の流れも、

ガタンゴトンと揺られているうちに一様にならされていくわけだが、

これは冶金において、

まず高温で加工した金属が、やがて冷えて安定化していくときの

分子の挙動とも共通している。

 

入り口は日常的な疑問なのだが、

そこから通底する根本原理を考えていくなかで、

色々な分野、大小さまざまなスケールの問題を行き来する思考が面白い。

 

ということは、

類比思考をうまく活用することで、

課題解決に、よその分野からヒントを得ることも可能である。ともいえる。

 

知財分野の話にひきつけると、技術分類というのは

えてして要素技術で区切られており、

一概に製品分野で区切られているわけではないゆえに、

IPランドスケープ®においては、技術展開を考える際に

知財情報が参考となるひとつの所以になるわけだ。

(たとえば画像認識という要素技術は

 製品分野としてはセキュリティ、半導体加工、エンタメ、など多岐に渡る)

 

技術転用がうまい企業さんというのは、

ビジネス上のトレンドに合わせて、

自社のコア技術を転用して生きのこると聞く。

 

プラントエンジニアリングでいえば、

最古のプラントは、小麦粉を挽く水力ミルだったとも聞く。

その後の歴史で、粉粒体を扱うプラントということでいえば、

食品は勿論、製薬、化学プラント、建築資材、資源リサイクル、

といった様々な適用分野がうまれているが、

これらの分野で、共通して活用できる課題-解決技術があるだろう、

という予測がたつ。

 

製造業ビジネスの世界でも、

○○学、たとえば流体力学レオロジー、といったように、

学問分野での切り分けを図ることは、

要素技術を特定し、共通する課題解決メソッドを引き出す、

という極めて実用的なメリットがそこにあるようにも思った。

 

 

・・・長くなってしまった。